弁護士 新 英樹(久米法律事務所)

賃料滞納への対応方法は?

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賃料や家賃を期限以内に支払わない滞納者がいる場合は、法的手段を執ることになりますが、いきなり訴訟を提起するのではなく、まずはその他の手段を検討することになります。

賃料滞納者への対応は次の手順に従って進めましょう。

①滞納金額等の確定
②滞納者に対する滞納賃料の支払請求
③保証人に対する滞納賃料の支払請求
④支払督促
⑤訴訟手続き(少額訴訟、通常訴訟)
⑥強制執行

■①滞納金額等の確定
まずはいつから滞納が発生しているのか、滞納額の総額を計算します。ある月から一切賃料が支払われなくなるケースもあれば、支払う月もあれば支払わない月もあるというケースもあるため、滞納金額として請求する内容を確定しましょう。

賃料滞納は単なる借主の失念により生じることもあるため、簡単な文書で通知したり、電話・メールなどで連絡したりして様子を見るのも良いでしょう。

滞納の改善が見込めない場合は次の段階に進みます。

■②滞納者に対する滞納賃料の支払請求
滞納者に対して滞納賃料を請求する場合、配達証明付きの内容証明郵便を利用しましょう。内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に、どのような内容の書面を発送したかを郵便局が証明する郵便をいいます。内容証明郵便は発送の時期、書面の内容を証明してくれるため、書面の受領をめぐるトラブルを避けることができ、後に訴訟に発展した場合は強力な武器になります。

内容証明郵便自体には、支払いを強制させたり、財産を差し押さえたりする効力はないことに注意です。しかし、契約解除や訴訟提起等の法的措置を執る旨を記載することで、借主に心理的プレッシャーを与えることができ、この段階で解決することも少なくありません。費用もそれほど掛からないため、滞納が2か月以上続くようであれば、内容証明郵便を検討しましょう。

内容証明郵便には以下の点を明記します。

・現在までの滞納金額(請求金額)
・滞納賃料の支払期限日
・入金先の口座
・期限以内に支払がない場合、契約解除の上で立ち退きなどの法的措置を執る旨

内容証明郵便を一度送ってしまうと、訂正することはできません。誤った内容を記載すると、裁判に発展した際に不利になる危険があります。記載は慎重に行い、書き方に不安がある場合は、郵便局や弁護士等の法律専門家に相談しましょう。

■③保証人に対する滞納賃料の支払請求
②の措置を行っても支払いがない場合、②と同様の流れで連帯保証人に支払い請求を行います。連帯保証人の情報は賃貸借契約書に記載があります。

■④支払督促
支払督促とは、金銭等の一定の数量の給付を目的とした請求に限って利用できる手続きです。土地の引渡しや建物の明渡しの請求では利用することができないので注意しましょう。

支払督促は、申立書に必要事項を記載し提出するだけで裁判所から督促状を出してもらえる、費用も安く利用しやすい制度です。相手から異議申立てがあると、通常訴訟に移行するため、効果が薄いとも言われますが、裁判所からの通知が発せられることで、借主に心理的圧力を与えることができます。

支払督促は、請求金額に関わらず、簡易裁判所で手続きを行います。

■⑤訴訟手続き(通常訴訟、少額訴訟)
上記手続きを経ても滞納し続ける場合(目安としては賃料滞納が3か月以上続く場合)は、訴訟手続きに移行します。請求額が60万円以下の場合は少額訴訟も検討しましょう。

●通常訴訟(民事訴訟手続き)
民事訴訟は、訴状を裁判所に提出することによって始まります。借主に立ち退きも求めるのであれば、賃料支払請求と共に建物明渡請求も行いましょう。

訴訟の際の必要書類としては、以下のものがあります。

・賃貸借契約書
・弁護士に依頼するための委任状
・貸主が法人の場合、代表事項証明書
・発送した内容証明郵便の控え及び配達記録証明書

手続きの流れとしては、口頭弁論期日において原告(訴えた側)や被告(訴えられた側)が訴状や答弁書を提出後、争点整理、証拠調べを経て、争いがある事実につき原告・被告のいずれの主張が正しいのかを裁判所が判断します。証拠が出そろい、裁判所が判決できると判断すれば、口頭弁論は終結し、判決に至ります。

訴訟では、裁判所から和解が積極的に勧められます。妥協の余地があれば応じる姿勢を見せることも大切です。

●少額訴訟
訴額が60万円以下の場合は少額訴訟制度を利用できます。少額訴訟では、原則として1回の期日で判決が言い渡されるので、非常に簡単で、費用も時間も掛かりません。利用できるのであれば、積極的に利用しましょう。

■⑥強制執行
滞納賃料の支払いを命ずる確定判決(または和解調書が作成された場合など)がなされると、これを債務名義として強制執行手続きを行い、強制的に滞納賃料を回収することができます。ただし、強制執行にはかなりの費用と手間が掛かるため、強制執行手続きに踏み切る前に、最後にもう一度、借主側に判決内容を任意に履行するよう求めるようにしましょう。

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