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犯罪に遭った被害者ができることとは?

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犯罪被害に遭うと、被害者やその家族は精神的・肉体的な苦痛、経済的な負担など、さまざまな困難に直面します。
被害を受けた直後は不安や混乱が大きく、どのように対応すればよいのか分からない方も少なくありません。
そのため、被害者を支えるためのさまざまな制度や支援策が整備されていることを知っておくことは、とても大切です。
これらの制度を知り、適切に利用することで、被害者は生活再建に向けた大きな一歩を踏み出すことができます。
本記事では、被害者が利用できる主な制度について解説いたします。

犯罪被害者ができること

犯罪の被害に遭った場合、被害者は犯罪被害給付金の受け取りや加害者への損害賠償請求など、さまざまな行動を取ることができます。
さらに、被害者参加制度で法廷で意見を述べる機会が認められたり、被害者支援団体による心理的・経済的な支援を受けることも可能です。
被害者が適切な支援や補償を得るためには、これらの制度を理解し、必要に応じて活用することが重要です。

被害者参加制度

被害者参加制度とは、一定の重大事件において被害者や遺族が刑事裁判に参加できる制度です。
この制度を利用することで、傍聴席から裁判をただ見守るだけでなく、被告人質問や意見陳述、弁論を行うことができます。
これにより、事件で受けた精神的苦痛や被害の実態を裁判官に直接訴え、被告人への処罰感情を表明できるため、被害者自身の感情的な回復にもつながります。
この制度を有効に活用するには、法的な専門知識が不可欠です。
被害者自身の意見を明確かつ説得力のある形で伝えるために、弁護士が被害者の代わりに法廷で意見を述べたり、被告人質問を効果的に行ったりしてくれます。

実際にこの制度により、被害者は裁判に出席し、以下のことを行うことができます。

  • 検察官の訴訟活動に意見を述べたり、検察官に説明を求めることができる
  • 被告人に質問をすることができる
  • 証人が情状について証言した際に、その証明力を争うための尋問を行える

ただし、全ての事件で被害者参加制度が適用されるわけではありません。
次のような犯罪の被害者が、制度を利用することができます。

  • 殺人や傷害など、故意の犯罪行為による殺傷事件
  • 強制性交等や強制わいせつ
  • 逮捕・監禁
  • 過失運転致死傷など

制度を利用するには、事件を担当する検察官に刑事裁判への参加を申し出る必要があります。
申出を受けた検察官が裁判所に通知することで、裁判所は、犯罪の性質や被告人との関係、その他の事情を考慮して、刑事裁判への参加を許可するかどうかを判断します。
被害者参加制度の他にも、犯罪の種類を問わず被害者が法廷で意見を述べられる制度に、心情等の意見陳述制度があります。

損害賠償請求の申立て

犯罪被害者は、加害者に対して損害賠償を請求する権利を有しています。
これには、治療費や慰謝料、逸失利益などの金銭的補償が含まれます。
刑事事件の判決確定後に別途民事訴訟を起こす方法の他に、刑事裁判内で「損害賠償命令制度」を利用することもできます。
この制度は、刑事裁判の記録をそのまま使用できるため、民事訴訟を別途提起するよりも、簡易で安く、そして迅速に損害賠償の支払いを命じる判決(債務名義)を得られるという大きなメリットがあります。
弁護士は、適切な損害賠償額を算定し、裁判所への申し立て手続きを代行することで、被害者が確実に補償を得られるようサポートします。
この制度を利用することで、刑事裁判の中で損害賠償の審理と判断が同時に行われ、被害者の負担軽減につながります。

被害者が受給できる支援制度

犯罪被害者の方には、日常生活の回復をサポートする、いくつかの経済的・精神的支援制度が用意されています。

被害者支援制度

被害者支援制度は、犯罪被害者やその家族に対して、精神的・経済的支援を提供する公的制度です。
たとえば、カウンセリングの実施や同行支援など、多岐にわたるサービスが用意されています。
これにより、被害者が日常生活に復帰するための心理的安定や経済的負担の軽減を図ることができます。
また、各都道府県には犯罪被害者等支援条例が整備されており、自治体による独自の支援も提供されています。
支援の申し込みは、警察や自治体の窓口、被害者支援センターなどを通じて相談することが可能です。
被害者が孤立せず、社会全体で支える仕組みを整えることが、この制度の重要な役割です。

犯罪被害給付金

犯罪被害給付金制度は、被害者や遺族が受ける経済的損失を補填するために設けられた公的な救済制度です。
給付金は、以下の3種類に分かれます。

  • 遺族給付金
  • 重症病給付金
  • 障害給付金

申請には期限があり、犯罪行為による死亡、重傷病又は障害の発生を知った日から2年を経過したとき、又は当該死亡、重傷病又は障害が発生した日から7年を経過したときはできません。
各都道府県の県警本部や警察署が申請場所になります。
給付金は、犯罪による被害者やその家族の生活再建を支える重要な手段であり、経済的負担の軽減を目的としています。

まとめ

犯罪被害者には、被害者参加制度や損害賠償請求といった複数の救済手段が用意されています。
そのほかにも支援・給付金制度があり、犯罪被害者の生活再建をサポートします。
これらの制度を理解し、必要に応じて活用することで、被害者は日常生活への一歩を踏み出すことができます。
犯罪被害に遭われ支援が必要な際には、弁護士への相談をぜひご検討ください。