弁護士 新 英樹(久米法律事務所) > 記事コンテンツ > 保釈請求とは?~保釈されるまでの流れ~
刑事事件で逮捕された後、一定の条件のもとで被疑者や被告人が拘束を解かれる制度が「保釈」です。
保釈請求は、身体の自由を制限されているひとが行う重要な手続きです。
今回は、保釈請求の意味や流れ、そして保釈が認められるまでの具体的な手順を解説します。
まずは、保釈に関する基礎知識を確認していきましょう。
保釈とは、刑事訴訟法で定められた制度で、起訴後に被告人の身体拘束を一時的に解くためのものです。
起訴された後、被告人は「勾留」されたまま裁判を待つのが一般的です。
しかし長期にわたり勾留されるのは、人権の観点からも問題があるため、保釈という制度で一時的な自由が認められます。
保釈が請求できるのは、起訴された直後からです。
逮捕された直後や勾留中の段階では、保釈請求は認められていません。
よく混同されがちですが、「保釈」と「釈放」は意味が異なります。
主な違いは、以下の表の通りです。
項目 | 保釈 | 釈放 |
請求の有無 | 請求できる | 裁判所の判断による(請求して認められるというものではない) |
保釈保証金の有無 | 必要 | 不要 |
タイミング | 起訴されてから判決が出るまでの間 | 逮捕後から受刑者になった段階までさまざま |
身柄の拘束を解かれる期間 | 一時的 | 一時的または永久 |
あくまでも保釈は一時的に身柄の拘束を解かれるだけであり、裁判で実刑判決が下されれば再び拘束されます。
保釈には、主に以下の3種類があります。
まずは、権利保釈に該当するかどうかが検討され、もし認められない場合は裁量保釈・義務的保釈ができるかどうかが判断されます。
刑事訴訟法89条で規定されている、6つの条件(保釈除外事由)に当てはまらなければ、権利保釈が認められます。
「重大犯罪で起訴されている」というのは、具体的には死刑や無期懲役が科される可能性のある事件です。
なお、上記の他にも特別な条件が付けられているケースもあります。
裁量保釈は、裁判官の裁量による保釈なので、明確な条件が設定されているわけではありません。
ポイントとなるのは、「逃げたり証拠を隠したりする心配がないこと」と、「本人が保釈されないと困る事情があること」の2つです。
義務的保釈は、勾留の期間が必要以上に長くなった場合に認められる制度です。
ただし、「どれくらいの期間が長すぎるのか」について明確な基準はありません。
事件内容や審理の進み具合、被告人の状況などを総合的に判断して決定されます。
保釈を得るまでには、いくつかの手続きがあります。
①起訴
②保釈請求書の提出
③検察官の意見提出
④裁判所の判断
⑤保釈保証金の納付
⑥保釈条件の遵守と釈放
それぞれ確認していきましょう。
被疑者が起訴されると、法律上「被告人」として裁判にかけられる立場になります。
この段階から初めて、保釈請求が認められます。
逮捕直後や勾留中(起訴前)には、保釈請求はできませんので、タイミングに注意が必要です。
被告人本人、弁護士、あるいは親族などが保釈請求書を裁判所に提出します。
実際には、弁護士が書類作成から提出までを行い、保釈を希望する理由や保証金の見込み額なども含めて申請するのが一般的です。
弁護士が保釈に向けて具体的な事情や証拠をそろえ、裁判所に説得力のある説明をできるかどうかが、可否の判断に大きく影響します。
裁判所は、保釈の可否を決める前に、検察官の意見を求めます。
検察官は、「逃亡する可能性があるか」「証拠隠滅のリスクがあるか」など、保釈に反対すべき事情がないかを確認して意見を提出します。
保釈請求と検察官の意見が出そろった段階で、裁判官が保釈を認めるかどうかを判断します。
資料や事情説明、リスクの有無を総合的に見て判断され、数日以内に決定が出されるのが一般的です。
保釈が認められる場合、裁判所は同時に「保釈保証金」の金額も決定します。
保証金の納付が確認されて初めて、実際の釈放が行われます。
保釈が認められた場合、裁判所が指定する金額の保釈保証金を納付する必要があります。
金額は、犯罪の重大性や被告人の経済力などで変わります。
一般的な刑事事件であれば、150万円〜300万円が相場です。
保釈金は、何かトラブルを起こさない限りは、判決確定後に返ってきます。
保証金の納付が確認されると、被告人は釈放されます。
ただし、以下のような条件を遵守しなければなりません。
上記を破った場合、保釈が取り消され、保証金も没収される可能性があります。
今回は、保釈請求とは何か、そして保釈されるまでの流れを解説しました。
保釈は起訴後にしか認められず、保証金の納付や条件の遵守などが求められます。
被告人の権利を守るために重要な仕組みですが、保釈が認められないケースもあるため注意が必要です。
身近なひとが逮捕された場合は、弁護士に相談しながら正しい手続きを取るのが大切です。