弁護士 新 英樹(AA法律事務所) > 記事コンテンツ > 不動産賃貸借契約書のよくあるトラブル|対策も併せて解説
賃貸物件を借りる際には、貸主と借主の間でさまざまな合意事項を盛り込んだ賃貸借契約書を取り交わします。
しかし、この賃貸契約書をめぐってトラブルが発生することがあります。
今回は、不動産賃貸借契約書のよくあるトラブルと、対策について解説します。
不動産賃貸契約書にある原状回復費用の特約は、トラブルが発生しやすい項目です。
原状回復とは、賃借人の居住や使用によって発生した建物価値の減少のうち、故意や過失など、通常の使用を超えるような使用による損耗を復旧することをいいます。
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(※)において、いわゆる経年変化や通常の使用による損耗等の修繕費用は賃料に含まれるものとし、貸主が負担することになっています。
一方で、借主が原状回復義務を負うべきケースとして挙げられているのは、主に借主の住み方によって生じた損耗と、通常の使い方で発生したものの借主の管理が悪かったことによって損耗が拡大したものです。
ただし、借主が賃料を支払っていることを考慮して、以上のケースでも建物の経過年数が多いほど修繕費用の負担割合を減少させる考え方を採用しています。
このように、借主が修繕費用をどこまで負担するべきかは判断が難しく、貸主との間でトラブルが生じる可能性があります。
対策としては、入退去時における損耗等の有無など物件の状況をよく確認しておくことが重要です。
室内に既存の傷や汚れがある場合には、日付入りの写真に収めて管理会社へ提出できるようにしておくと良いでしょう。
また、契約締結時には、原状回復などの契約条件を当事者双方がよく確認し、納得したうえで契約を締結することがトラブルを未然に防止するために有効となります。
※参考URL:https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf
急な転勤などにより、契約期間の途中で退去を申し出たところ、契約書の短期解約違約金に関する特約を根拠にペナルティとして違約金を請求されることがあります。
借主が違約金の存在を認識していないと、想定外の出費に困ってしまうかもしれません。
しかし、賃貸契約書で解約金について明記されている場合には、借主が支払いを拒否することはできません。
想定外の出費への対策としては、契約書の解約・更新に関する条項を事前に確認しておくことが大切です。
解約予告を退去前のいつまでにしなければならないかも併せて確認しましょう。
記載の期限までに解約予告をしていないと、家賃を2重に支払う期間が発生するリスクがあります。
入居後に、契約書に記載のない行動によって、契約解除されるトラブルが見られます。
たとえば、借主が貸主の承諾なしに長期にわたり友人を同居させたり、自身が不在の間だけ部屋を他人に転貸して利益を得たりしたケースです。
賃貸契約書には、原則として「貸主の承諾なく、第三者に建物を転貸したり、同居人を増やしたりしてはならない」という禁止事項が記載されています。
禁止事項に抵触する行為を行ったことが近隣住民からの通報や管理会社の定期巡回データによって発覚した際、貸主側から即時の契約解除を言い渡される可能性が高いです。
さらに、違約金の支払いを求められることもあるかもしれません。
このような事態を避けるために、同居人が増える場合には、必ず実行する前に管理会社や貸主に対して条件の変更を申し出てください。
同居人の住民票や身元確認データを提出し、契約書の変更合意書を交わすことで正式に認められるケースもあります。
また、転貸行為は、賃貸契約違反となるだけでなく旅館業法等の法令に抵触するリスクが高いため、独断では行わないようにしてください。
室内に備え付けられているエアコンや給湯器などの設備が故障した際、よく修理の手順や費用の負担をめぐってトラブルが発生します。
具体的には、設備が故障した際に借主が管理会社への連絡手順を踏まず、自ら手配した修理業者に依頼して直してもらって費用の請求書を貸主側に回すと、貸主から支払いを拒否されることがあります。
貸主に修繕費用を負担してもらいたいのであれば、設備が故障した際には必ず契約書に記載されている管理会社へ連絡するようにしてください。
管理会社に連絡を入れたにもかかわらず、合理的な理由なく長期間にわたり修理を放置された場合には、借主自らが業者を手配しても、費用を後から請求する事が可能です。
今回は、不動産賃貸借契約書に関連するトラブルを解説しました。
賃貸契約書に関連するトラブルの多くは、契約を結ぶ段階での確認不足や、トラブル発生時における自己判断での行動が原因となっています。
不動産賃貸借契約書の内容に不安を感じられた場合や、トラブルが発生した際の対応に迷われた場合には、弁護士にご相談ください。