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傷害事件で逮捕されてからの流れと釈放までを確認

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傷害事件で逮捕された場合は、検察への送致、勾留、起訴と刑事手続きが進められます。
逮捕後勾留されると最長で23日間にわたり身体拘束を受けてしまいますし、起訴された場合は、ほぼ確実に有罪となり、前科が付いてしまいます。
傷害事件で逮捕を回避したり、早期に身体拘束を解いてもらうためには、弁護士に依頼し、被害者との示談を成立させることが大切です。

傷害事件での逮捕とは?

傷害事件での逮捕で逮捕されるのは傷害罪に該当した場合ですが、刑法204条には「人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と定められています。
人の身体を傷害することとは、ナイフなどで刺したり、殴って骨折させることが典型例ですが、他人の身体に直接、傷をつけることだけが傷害に該当するわけではありません。
たとえば、自宅でラジオ、目覚まし時計を大音量で長期間鳴らして、隣家の住民にストレスを与えたことにより、慢性頭痛症、睡眠障害を生じさせることも障害に該当するとした判例があります(最決平成17年3月29日)。

傷害事件で逮捕されるパターン

傷害事件で逮捕されるパターンは、現行犯逮捕のケースと後日逮捕のケースが挙げられます。
現行犯逮捕のケースは、加害者が被害者に暴行を行って傷害を負わせた現場で、加害者が取り押さえられて、警察に引き渡されるケースが挙げられます。
後日逮捕のケースは、傷害事件の現場では逮捕されなかったものの、警察の捜査で、加害者が特定できた場合に、警察が逮捕状を取ったうえで、加害者の自宅などで逮捕を行うケースです。
また、精神的ストレスを与えるタイプの傷害の場合は、被害者の告訴を受けて警察が捜査を開始し、逮捕に至るケースもあります。

傷害事件で逮捕するための要件とは?

傷害事件を起こした場合、必ず逮捕されるわけではありません。
刑事事件を起こした被疑者を逮捕するためには、次の二つの要件を満たしていなければなりませんが、これは傷害事件でも同様です。
 

  • 逮捕の理由:被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
  • 逮捕の必要性:被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないとは言えないこと。

傷害事件で逮捕を回避するには?

被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証隠滅のおそれがなければ、逮捕されないケースもあります。
傷害事件で逮捕を免れるための有効な手段が、弁護士を通じて被害者と示談し、治療費や慰謝料を支払うなどして、被害者の損害を回復させると共に真摯に謝罪して、許しを得ることです。
被害者との示談が成立したり、被害者が告訴や被害届を取り下げた場合は、警察も逮捕しない方針に切り替えることもあります。

傷害事件で逮捕された後の流れ

逮捕された後は、警察による取り調べと検察への送致及び検察における起訴、不起訴の判断がなされます。
おおよその流れは次のとおりです。

  1. 逮捕:警察における取り調べ
  2. 検察への送致:逮捕から48時間以内
  3. 勾留請求:検察への送致から24時間以内
  4. 勾留決定:原則として10日間まで。延長により最大で20日間勾留可能
  5. 起訴・不起訴の決定


つまり、逮捕された後、最長で23日間は留置場や拘置所で身体拘束を受ける可能性があります。
逮捕後、早期に釈放されるために重要なことは、勾留を回避することです。

傷害事件で被疑者を勾留するための要件とは?

勾留は、検察官が被疑者を勾留する必要があると判断した場合に裁判所に請求し、裁判所が勾留状を発することで行われます。
勾留は必要性が認められた場合のみ認められます。
具体的には被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることを前提に、次の勾留の理由が認められるかどうかがポイントになります。

  • 被疑者が定まった住居を有しないこと。
  • 被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること。
  • 被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること。

傷害事件で勾留を回避するためには?

傷害事件で勾留を回避するためには、弁護士に依頼して、勾留の理由がない旨の主張を展開することが大切です。
検察官が勾留請求する前であれば検察官に対して、勾留請求後は裁判所に対して、その旨の主張を行います。
具体的な主張内容は次のとおりです。
被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がないことについては、

  • 客観的証拠がすべて押収済みであり、隠滅の余地がないこと。
  • 被疑者が罪を認めており、罪証隠滅を図る考えがないこと。
  • 現場にいた他の人も、罪証隠滅に助力する考えがないこと。

等の供述録取書を作成します。
被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がないことについては、

  • 被疑者には共に暮らす家族がいて、特に配偶者による監督が期待できること。
  • 安定した職業についており、勤務先からの監督も期待できること。

等の供述録取書を作成します。
さらに、被害者との示談が見込まれることやすでに示談が成立した場合は、検察としては不起訴の判断をする可能性が高まりますから、勾留の必要性が低くなります。

傷害事件で起訴されてしまった場合は?

傷害事件に限らず、刑事事件で起訴された場合は、99%の確率で有罪判決が出されます。
執行猶予が付いたとしても、前科として残ってしまうため、その後の生活に様々な影響が出てしまいます。
そのため、傷害事件で前科をつけないようにするためには、不起訴処分を勝ち取ることが重要になります。

傷害事件で不起訴処分を得るためのポイント

不起訴処分を得るためにポイントとなるのが、被害者との示談を成立させることです。
治療費や慰謝料を支払うなどして、被害者の損害を回復させ、被害者に謝罪して許しを得ることです。

まとめ

傷害事件で逮捕されてからの流れと釈放されるタイミングについて解説しました。
逮捕を免れるためにも、逮捕後に早期に身体拘束を解いてもらうためにも、弁護士に依頼して被害者との示談を成立させることが重要です。
傷害事件の場合、示談を行わず、流れに任せてしまうと、起訴されて、有罪判決が下され、前科が付いてしまう可能性があります。
起訴された後で、慌てても、弁護士にもできることは限られてしまいます。
傷害事件を起こしてしまった場合は、できる限り早い段階で弁護士に相談することが大切です。